ふわふわピローくんのやさしいおやすみ冒険

夜の静けさがお部屋をそっと包むころ、
ベッドの上で一番ふわふわの枕が目を覚ましました。
その名はピローくん。
真っ白なカバーに月明かりをまとい、
まるで雲が小さく丸まったような姿です。

第１章ためいきの風

ピローくんは寝かしつけに失敗してくるくる身をよじるちいさな男の子、
アオくんのために今日も頑張ります。
でもアオくんは「まだ遊びたいよ」と枕をポンポン叩き、
お布団の中でぐるぐる回転。
そこでピローくんは深い息をひとつ吸い込み、
ふわりとためいきの風を吹き出しました。

その優しい風はお部屋にかかったカーテンを揺らし、
カーテンはさらさらと子守歌を奏でます。
アオくんのまぶたが少しだけとろり。

「まだ少し目が冴えてるよ」とアオくん。
そこでピローくんはカバーの中から小さな夢の星を取り出しました。
星はちいさな鈴の音を立てながらくるくる空を舞い、
天井に金色の道を描きます。

光の道を見つめるとき、
人は自然に目を細めて焦点をゆるめます。
まぶたが重たくなったアオくんはピローくんにそっと頭をのせ、
「つぎはどこへ行くの？」と小さな声。

ピローくんは
「それなら雲の上のお城に行こう」とひそひそ話。
すると夢の星が光の道を
ふわふわの雲へと続かせました。

二人が雲のお城に着くと、
もこもこのベッドが「おつかれさま」と招き、
空からはほんのり甘い綿菓子の雨がふわり。

アオくんは口をあけ、
ほろりと溶ける甘さを味わいながら、
「もう眠くなってきたかも」とつぶやきました。

ピローくんはそっとアオくんを
雲のベッドに寝かせます。
「目を閉じて呼吸をゆっくり—
１、２、３…」

綿菓子の雨は止み、
夢の星はカーテンの向こうへ。
お城の灯りがゆらゆら揺れ、
子守歌のメロディーに静かに溶け込みます。

アオくんの胸がすう… と上下して、
ピローくんにあたたかな重みが戻りました。
ピローくんはほっと微笑み、
「おやすみなさい」と優しくささやきます。

朝になり窓から差し込む光が
ピローくんのカバーを照らしました。
アオくんはぐっすり眠った顔で
「おはよう」とにっこり。

ピローくんは心の中で
「今日も一緒に素敵な夢を見ようね」と約束しました。
そして今夜もきっと、
ためいきの風と夢の星を連れ、
アオくんをふわふわの眠りへ導くのです。